
3D(3次元)測量とは、地形や建物の「幅・奥行き・高さ」を立体的なデジタルデータとして取得する技術です。かつて主流だった対象に直接触れて測る「接触式」に代わり、現在は離れた場所からレーザーや写真で計測する「非接触式」が一般的になっています。この技術の最大のメリットは、崖地や災害現場といった立ち入りが困難な場所、あるいは危険が伴う現場でも、離れた場所から安全にデータを取得できる点にあります。現在は国土交通省が推進する「i-Construction(建設現場のICT化)」の後押しもあり、建設業界をはじめとする多くの分野で導入が急速に広がっています。
一方で、3D測量は技術革新のスピードが非常に速い分野です。自社の業務に最適な手法や機器を選定し、最新の動向を正確に捉えた導入判断を行うためには、専門的な視点が欠かせません。
今回は、3D測量の具体的な仕組みや計測手法、機器選定のポイント、そして実際の活用事例について解説していきます。
目次
3D測量の主な計測方法
3D測量の手法は多岐にわたりますが、代表的な計測方法は「地上」「空中」「水中」「人工衛星」の4つのカテゴリに分類されます。それぞれの特徴や用途について詳しく紹介します。
1. 地上で行う3D測量(地上レーザー・MMS)
地上で行う3D測量の主な手法には、固定地点から計測する「地上レーザー測量」と、移動しながら計測する「車載写真レーザー測量(MMS)」の2種類があります。
●地上レーザー測量(固定式スキャナー)
三脚などで固定したパルス式レーザースキャナーを用いて、対象物の3次元点群データを取得する方法です。この技術は、起工測量から出来高管理、出来形管理、さらには詳細な断面図の作成まで多目的に活用されています。機器を安定した状態で設置し、対象物との距離も比較的近いため、非常に高い精度を確保できる点が大きな強みです。
●車載写真レーザー測量(モービルマッピングシステム=MMS)
レーザースキャナーや360度カメラを搭載した専用車両を走行させ、広域のデータを効率的に取得する手法です。走行距離計やGNSS(※)アンテナと高度に連動することで、移動中であっても正確な位置情報を記録できます。一方で、物理的に車両が進入できない場所や、GNSS信号の受信が困難な山間部など、現場の環境によっては適さないケースもあります。
※Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)
2. 空中から行う3D測量(ドローン・有人航空機)
空中からの3D測量は、主に「ドローン(UAV)」または「有人航空機(セスナ・ヘリ)」を用いて行われます。それぞれ、カメラによる写真撮影か、レーザー照射による計測のいずれか、あるいは両方を組み合わせて実施されます。
●ドローン(UAV)写真点群測量
ドローンを活用し、上空から撮影した連続写真から3次元データを復元する手法です。デジタル処理によって立体的な形状(点群)を抽出することで、精密な計測を可能にします。自動飛行や遠隔操作ができるため、人が立ち入ることが危険な場所や、車両が進入できない現場の測量に適しています。
●ドローン(UAV)レーザー測量
ドローンに専用のレーザー計測装置を搭載して測量を行う手法です。写真点群測量との大きな違いは、レーザー光が草木の隙間を通り抜けて地表まで届く点にあります。そのため、表面の様子しか分からない写真測量とは異なり、森林や山岳地帯でも正確な地表の地形データを取得できます。ただし、計測装置が非常に高価なため、機体の導入には数百万円単位のコストがかかる点に留意が必要です。
●有人航空機による空中写真測量
セスナやヘリコプターなどの有人航空機を使い、上空から広範囲を撮影して3次元測量を行う手法です。機体に搭載された衛星測位システム(GNSS)と姿勢計測装置(IMU)を連動させることで、写真の位置と機体の傾きを正確に記録しながら計測を進めます。
●有人航空機による航空レーザー測量(ALB含む)
有人航空機にレーザースキャナーを搭載し、上空から3次元データを取得する手法です。ドローンよりも高い高度から計測できるため、GNSS受信機やIMU(慣性計測装置)と連携させることで、市区町村単位のような広大なエリアも効率的に測量できます。また、特殊な「グリーンレーザー」を用いることで、水を透過して海底や河床の形状を計測する「航空レーザー測深(ALB)」という高度な技術も存在します。
3. 水中・海底の3D測量(マルチビーム測深)
海底や川底といった水中の地形データを取得する際には、「マルチビーム測深」という手法が用いられます。測量船の船底から「マルチビーム」と呼ばれる扇状の音波を発射し、その反射を測定することで水底の形状を正確に描き出します。この技術には、水深に合わせて「浅海用」「中深海用」「深海用」の3種類があり、数メートルの浅瀬から数千メートルの深海まで、幅広い環境での測量に対応可能です。
4. 人工衛星による3D測量(衛星画像解析)
人工衛星から撮影された高精度な画像を解析し、3次元データを抽出する手法です。この際、地形の起伏による位置のズレや歪みを取り除き、正しい位置情報に補正した衛星画像(オルソ画像)を活用します。最大の特長は、航空機による測量よりもさらに広大な範囲の情報を一括して取得できる点にあります。一方で、衛星の軌道から外れたエリアの計測が難しいことや、データの取得・処理に相応の時間を要するといった課題も持ち合わせています。
3D測量を導入する3つのメリット
3D測量の導入は、従来の測量手法が抱えていた「安全性」や「効率性」といった課題を解決し、多大な恩恵をもたらします。ここでは、主な3つのメリットについて解説します。
1. 非接触計測で離れた場所や複雑な地形状でも測量ができる
3D測量なら、対象物から離れた場所からでも精度の高いデータを取得することができます。複雑な地形状はもちろん、人が立ち入れない急傾斜地や、建物が密集した隙間の測量にも柔軟に対応します。ドローンを活用すれば、上空から自由度の高い計測を比較的低コストで実現できるほか、より広域の地形データを一括して取得したい場合は、航空機や人工衛星による3D測量が有効です。
2. 少人数・短時間での作業による工期短縮とコスト削減ができる
3D測量の導入は業務効率を劇的に向上させ、少人数のチームでも従来の測量手法と遜色ない、あるいはそれ以上の成果を上げることが可能です。例えば3Dレーザースキャナーを使用すれば、短時間で膨大な範囲の3次元データを取得できます。ドローン測量の場合は重い機材を抱えて現場を歩き回る必要がなくなるため、大幅な工期短縮と省人化につながり、結果として人手不足の解消やコスト削減につながります。
3. 現場作業の安全性を向上させ、二次災害などのリスクを回避する
ドローンや航空機を用いた3D測量は、遠隔で計測できるだけでなく、現場への過度な機材搬入も不要になるため、危険区域や災害現場へ立ち入る際のリスクを最小限に抑えられます。対象物に直接触れる必要がないことから、高所作業などの危険を伴う工程も不要になります。従来の測量方法と比較して作業の安全性が格段に向上し、現場の労働環境改善にも直結します。
3D測量の具体的な活用事例
災害調査・土砂災害警戒区域の危険箇所測量
大規模な災害が発生した直後の被害状況調査や、土砂災害警戒区域の精密な測量において、3D測量は大きな力を発揮します。人が足を踏み入れるのが困難な急傾斜地や二次災害の恐れがある現場でも、遠隔から迅速かつ安全に、復旧計画の基礎となるデータを取得することが可能です。
ICT土木・都市開発・インフラ管理での土地利用
住宅地や工場、商業施設の建設から、広大な森林の管理にいたるまで、広範囲の地形データを効率的に取得したい場面で重宝されています。また、都市開発の計画立案だけでなく、歴史的建造物や遺跡の精密なデジタル保存、環境保護のための現況把握など、文化・環境分野の記録作成にも幅広く役立てられています。
まとめ
3D測量は「安全性」「効率性」「高精度」のすべてにおいて、従来の測量手法を大きく上回るメリットをもたらします。国土交通省が進める「i-Construction」の普及により、現場への導入はもはや標準となりつつあります。特にドローンを活用した測量は、他の手法に比べて導入コストを抑えながら、人が立ち入れない複雑な地形でも迅速に精密なデータを取得できるため、多くの企業で採用が加速しています。最新の技術を正しく選択し、現場に最適化させることが、これからの建設・測量業務における競争力の源泉となるでしょう。
当社が提供する「ChronoSky 3D」は、BIM/CIMで生成した3次元モデルを現況から作り出した3次元空間に取り込むことができ、現場の負荷を大幅に軽減します。これにより、プロジェクト全体の品質底上げを可能にします。3D測量の導入についてご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
Q&A
Q. 3D測量とドローン測量の違いは何ですか?
3D測量とは、地形や建物などの対象物を「幅・奥行き・高さ」の三次元データとして取得する測量技術の総称です。地上レーザー測量、航空レーザー測量、写真測量など、複数の計測手法が含まれます。その中の一つが、ドローン(UAV)を用いて上空から計測を行う「ドローン測量」です。ドローンに搭載したカメラで撮影した複数の写真を解析して三次元データを作成する方法などが用いられます。国土地理院が公表している「UAVを用いた公共測量マニュアル」でも、ドローンを用いた測量について次のように説明されています。
「UAV(無人航空機)を用いて空中写真を撮影し、これを用いて三次元形状を復元する測量方法である。」
参照:国土交通省国土地理院「UAVを用いた公共測量マニュアル」
このように、3D測量は三次元データを取得する測量技術全体を指す言葉であり、ドローン測量はその中の一つの計測方法です。測量対象の規模や地形、必要な精度に応じて、地上レーザー測量や航空レーザー測量などの手法と使い分けられています。
Q. i-Construction(アイ・コンストラクション)とはどんな取り組みですか?
i-Constructionは、建設現場の生産性向上を目的として国土交通省が推進している取り組みです。ICT(情報通信技術)を建設分野に導入し、測量・設計・施工などの建設プロセス全体の効率化を目指しています。
国土交通省は、i-Constructionについて次のように説明しています。
「「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取組」
参照:国土交通省「i-Construction」
この取り組みの背景には、少子高齢化による建設業の労働力不足があります。ICTや3D測量、ドローンなどのデジタル技術を活用することで、施工の効率化と安全性の向上を同時に実現することが期待されています。
Q. オルソ画像というのは、どんな画像ですか?
「航空カメラで撮影された空中写真は、レンズの中心に光束が集まる中心投影なので、レンズの中心から対象物までの距離の違いにより、写真上の像に位置ズレが生じます。写真に写る対象物が地面から高いほど、また写真の中心から周縁部に向かうほど、この位置ズレは大きくなります。上空から撮影した空中写真では、土地の起伏(高低差)による位置ズレが生じるとともに、高層ビルなどの高い建物や周縁部のとがった山の像は、写真の中心から外側へ傾いているように写ります。オルソ画像は、写真上の像の位置ズレをなくし空中写真を地図と同じく、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換(以下、「正射変換」という)したものです。オルソ画像は、写された像の形状が正しく、位置も正しく配置されているため、地理情報システム(GIS)などにおいて、画像上で位置、面積及び距離などを正確に計測することが可能で、地図データなどと重ね合わせて利用することができる地理空間情報です。」
参照:国土地理院「オルソ画像について」
参考文献
- 国土交通省「i-Construction」
- 国土地理院「無人航空機(UAV)を用いた測量作業における安全確保について」
- 国土地理院「空中写真について」
- 国土交通省「CIM 導入ガイドライン(案)」
- 国際協力機構社会基盤部「衛星画像を用いた写真測量の海外測量(基本図用)作業マニュアル」
- 国土交通省「ICTの全面的な活用(i-Construction)」
- 国土交通省「建設施工・建設機械:要領関係等(ICTの全面的な活用)」
- 国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」
- 国土交通省「国土交通省のドローン活用事例」
- 国土交通省「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」
- 国土交通省 近畿地方整備局 大規模土砂災害対策技術センター「UAVの自律飛行による砂防関係施設の自動巡視・点検に関する手引き」
- 国土地理院「マニュアル・要領等のダウンロード(UAV・航空レーザ・地上レーザ等一覧)」
- 国土交通省国土地理院「地上レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」
- 国土交通省国土地理院「地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理要領(土工編)(案)」
- 国土交通省国土地理院「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」
- 国土交通省国土地理院「UAV搭載型レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」
- 国土地理院「航空レーザ測深機を用いた公共測量マニュアル(案)」
- 国土地理院「先行公開!衛星画像から一目でわかる大地の動き」
- 海上保安庁「マルチビーム測深機」
- JAXA「地形のデータ(全球デジタル3D地図 ALOS World 3D)」
- パスコ株式会社「MMS(モービルマッピングシステム)で道路周辺の3次元測量」
- 株式会社コア「高精度測位を活用したドローンサービス『ChronoSky』」
- 国土地理院「オルソ画像について」
関連リンク
※本記事の記載内容は2026年3月現在のものとなります。
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