
軽油価格の乱高下、慢性的なドライバー不足、2024年問題による労働時間規制の強化、脱炭素化への対応など、個別でも深刻な課題が、いま一斉に経営を襲っています。こうした状況を踏まえ、国・自治体・業界団体は運送事業者向けの補助金・助成金を整備・拡充しています。これらを計画的に活用することで、設備投資、業務のデジタル化、環境負荷の低減、人材確保・安全対策といった優先課題に、返済不要の資金を充てることができます。
今回は、こうした最新動向を踏まえ、運送事業者が実務で使いやすい主要制度を整理してご紹介します。
※本稿の掲載情報は2026年3月時点のものです。2026年度以降は補助金制度の見直しが相次いでいます。制度名の変更・要件の改定・統廃合など変更点が多岐にわたるため、申請前に必ず最新の公募要領を確認するようにしてください。
目次
- ・運送事業者が申請できる補助金・助成金一覧(2026年度版)
- ・運送事業者が補助金・助成金を活用する3つのメリット
- ・運送事業者が知っておくべき補助金・助成金の2つのデメリットと注意点
- ・運送事業者の課題別補助金・助成金活用イメージ3選
- ・まとめ
- ・Q&A
運送事業者が申請できる補助金・助成金一覧(2026年度版)
運送事業者が活用できる補助金・助成金は、目的別に11の制度に整理できます。設備投資・デジタル化・環境対応・安全対策・人材確保など、経営課題ごとに使える制度が異なるため、自社の優先課題に照らして選ぶことが重要です。

※令和8年5月時点
1. 中小企業新事業進出補助金(運送業の新事業進出・業態転換に活用できる大型補助金)
事業再構築補助金の後継として2025年度に新設された、大型の補助制度です。既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資を支援するもので、補助上限額は従業員規模に応じて最大2,500万円〜7,000万円、大幅賃上げ特例を適用すれば最大9,000万円まで引き上げられます。
運送業においても、新たな収益源の構築、物流付加価値サービスへの進出、整備・倉庫機能の転換などでの活用が想定されます。
2. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(運送業の省力化・DX投資に使える補助金/最大4,000万円)
生産性向上への投資を考える中小企業・小規模事業者に広く活用されている定番の補助制度です。設備投資から新製品・新サービスの開発まで幅広く対応しており、補助上限額は最大4,000万円(従業員規模による)と、まとまった投資にも対応できる規模感が強みです。
運送業での活用場面は多く、仕分け・積付けの自動化、AIを活用した配車最適化、倉庫オペレーションの効率化など、現場の生産性を底上げする投資が対象となります。「人手をかけずに同じ仕事をこなす」仕組みづくりへの投資として活用できます。
3. デジタル化・AI導入補助金(運送業の点呼・配車・勤怠管理のデジタル化に活用)
中小企業・小規模事業者の労働生産性向上を目的に、AIを含むITツールの導入を支援する制度です。2026年度より「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へと名称・重点が刷新され、IT化支援にとどまらず、AI導入による業務の自動化や省人化を強力にバックアップする制度へと進化しています。補助額は1者あたり最大450万円で、補助率は類型や事業者規模によって異なりますが、小規模事業者は要件を満たすことで最大4/5まで引き上げることが可能です。
運送業では、点呼・受発注・請求・勤怠管理のデジタル化、インボイス・電子帳簿保存法への対応など、現場課題に直結する幅広い投資で活用できます。
4. 小規模事業者持続化補助金(地域配送・軽貨物事業者の販路開拓に活用できる補助金)
小規模事業者が販路開拓や生産性向上に取り組む際の費用を補助する制度で、経営計画の策定を前提に申請するのが特長です。補助上限額は通常枠で50万円(特例適用で最大250万円)、創業型では最大250万円。補助率は2/3で、地域の商工会・商工会議所を通じて申請します。
運送業では、地域配送・引越・軽貨物などの小規模事業者が、自社サービスの認知拡大や受注獲得を目的としたホームページ制作・リニューアル、チラシ・パンフレットなどの販促物制作、予約・受発注のオンライン化(EC導入)などで活用できます。大型投資には向きませんが、手軽に始められる販路開拓の第一歩として使いやすい制度です。
5. エイジフレンドリー補助金(高齢ドライバーの安全対策・健康確保に使える助成金)
高年齢労働者の安全確保と健康維持を目的に、設備導入や専門家による指導にかかる費用を支援する厚生労働省の制度です。補助率・上限額はコースによって異なります。
運送業では、フォークリフト周辺の転倒・腰痛防止のための設備導入、夏季の熱中症対策(スポットクーラー・冷却服等)、アシストスーツの導入などが対象として想定されます。ドライバーの高齢化が進む運送業にとって、活用しやすい制度のひとつです。
6. 低炭素型ディーゼルトラック補助金(中小トラック事業者の車両更新に活用できる環境補助金)
中小トラック運送事業者を対象に、燃費性能の高い低炭素型ディーゼルトラックの導入経費の一部を補助する環境省・国土交通省の連携事業です。 補助を受けるにあたっては、エコドライブを含む燃費改善のためのマネジメントシステムの整備が条件となります。補助額は車両サイズと廃車の有無によって異なり、廃車ありの場合は大型75万円・中型42万円・小型15万円、廃車なしの場合は大型50万円・中型28万円・小型10万円が上限です。既存の老朽車両の廃車を組み合わせることで補助額を最大化できるため、車両の更新時期に合わせて計画的に申請することが、効果的な活用につながります。
※令和8年5月以降の公募情報については、環境省、環境優良車普及機構の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
7. 商用車等の電動化促進事業(EVトラック・充電設備導入に使える環境省補助金)
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、BEV・PHEV・FCV等の電動商用車(トラック・タクシー・バス)および充電設備の導入費を補助する環境省事業です。国土交通省・経済産業省との連携事業として実施されており、電動化目標を掲げた事業者や、非化石エネルギー転換の影響を受ける事業者が主な対象となっています。
8. トラック輸送省エネ化推進事業(配車システム導入・輸送効率化への補助金)
トラック事業者と荷主等が連携して取り組む輸送効率化への投資を支援する経済産業省の補助事業です。車両動態管理システム・予約受付システム・配車計画システムなどのデジタルツール導入や、ダブル連結トラック・スワップボディコンテナ車両の導入が対象となります。
※令和8年5月以降の公募情報については、資源エネルギー庁の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
9. 全日本トラック協会(全ト協)助成事業(安全装置・自動点呼機器導入に使える業界団体助成制度)
安全・環境・経営改善に関する多様な助成メニューを提供している業界団体の助成制度です。安全装置等導入促進助成、SASスクリーニング検査助成、環境対応車導入促進助成、自動点呼機器導入促進助成、中央近代化基金(補完融資・燃料費対策特別融資)など幅広いメニューが用意されています。年度ごとに内容・上限額が更新されます。
※当社の「Cagou IT点呼」も助成対象機器です。
※令和8年5月以降の公募情報については、全日本トラック協会の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
10. 自治体融資(物価高騰の影響を受けた運送事業者が使える無利子融資制度)
自治体が独自に設ける無利子・低利融資のあっせん制度は、国の補助金と組み合わせて活用できる資金調達手段のひとつです。例えば渋谷区の「緊急中小企業支援資金」は、人件費・物価高騰の影響を受けた中小企業を対象に、上限2,000万円・無利子で融資をあっせんする制度です。神奈川県でも「原油・原材料高騰等対策特別融資」として、売上高等が一定以上減少した中小企業を対象に融資支援を実施しています。
※各自治体によって要件・条件が異なるため、事業所所在地の自治体窓口などで最新情報をご確認ください
11. 事故防止対策支援推進事業(IT点呼・遠隔点呼・自動点呼機器導入に使える国土交通省補助金)
自動車運送事業における運行管理機器の導入や過労運転防止に資する機器の導入、社内安全教育などの取り組みを支援する国土交通省の補助制度です。IT点呼・遠隔点呼・自動点呼機器や運行中の運行管理機器、運転者の疲労・睡眠状態を測定する機器などが補助対象となっています。補助額は機器の種類・台数に応じた定額方式で設定されます。
※当社の「Cagou IT点呼」も補助対象機器です。
※令和8年5月以降の公募情報については、国土交通省の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
運送事業者が補助金・助成金を活用する3つのメリット
補助金・助成金の活用は、単なる「資金調達の手段」にとどまりません。返済不要の資金で優先課題への投資を加速できるだけでなく、申請プロセスを通じた経営計画の精緻化や、公的審査を通過したことによる対外的な信頼性の向上など、経営全体にわたる副次的な効果が見込めます。
1. 返済不要で設備投資・DXへの先行投資が可能
省力化機器やITツール、環境対応車・充電設備、安全装置など、運送事業の現場課題に直結する投資に、返済不要の資金を計画的に充てられます。目的別に制度が整備されており、ものづくり補助金、デジタル化・AI導入補助金、新事業進出補助金など、課題に応じて使い分けることができます。
2. 申請プロセスを通じた事業計画の精緻化と社内整流化
補助金申請に向けて事業計画書・見積・工程表・KPIを整備するプロセスは、採択後の投資管理や効果検証の基盤にもなります。新事業進出補助金やものづくり補助金では申請様式が体系化されており、こうした計画策定の取り組みを通じて、社内の意思決定や管理体制の整流化が期待できます。
3. 補助金採択が金融機関・荷主からの社会的信用向上に直結
補助金・助成金は、公的機関の審査を通過した事業計画に対して交付されるものです。採択された実績は、経営の健全性と事業の妥当性を第三者が認めた証明として機能します。金融機関への融資相談では信用力の裏付けとなり、荷主企業との取引においても「きちんとした経営をしている事業者」として評価されやすくなるという副次的な効果も得られます。
運送事業者が知っておくべき補助金・助成金の2つのデメリットと注意点
補助金・助成金は返済不要の有効な資金調達手段である一方、申請すれば必ず受け取れるものではありません。採択競争や事後精算のしくみ、受給後の厳格な会計管理など、事前に把握しておくべき制約もあります。メリットと合わせてデメリットも正しく理解したうえで、計画的に活用することが重要です。
1. 採択競争と事後精算の仕組み(不採択リスクと後払い精算に注意)
補助金・助成金には、予算枠・採択基準があり、不採択リスクがあります。また、多くの制度で交付決定前の発注・支払いは補助対象外で、精算は後払い(実績報告・検査等)です。
実績報告では点呼記録や運行データなどの証憑提出が求められるケースもあり、日常業務の中でこれらをデジタルで一元管理しておくことが、申請準備の負荷を下げる実務的な備えになります。
2. 補助金適正化法に基づく厳格な会計・証憑管理が必要
補助事業は「補助金適正化法」の枠組みで執行されます。目的外使用や虚偽申請は交付決定の取消・補助金返還の対象となり、悪質な場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。
証憑・資産管理、処分制限、成果物の目的外使用の禁止など基本ルールの遵守は必須であり、補助金を受け取って終わりではなく、事業完了後も一定期間にわたる管理義務が生じる点を念頭に置く必要があります。
運送事業者の課題別補助金・助成金活用イメージ3選
補助金・助成金は、申請して受け取るだけでなく、実際の現場課題にどう結びつけるかが活用の鍵です。ここでは、運送業で特に活用しやすい3つの場面を取り上げ、どの制度をどのように使えるかを具体的に紹介します。
1. AI導入補助金による運行管理・点呼のデジタル化
運行管理者の業務集約や帳票の電子化、インボイス・電子帳簿保存法対応、勤怠の適正化などを目的に、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用できます。通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠などが設定されており、申請前にITツールが事務局に登録されていることが必要です。点呼・勤怠・配車データの一元化により、監査対応の迅速化、手書き記録の排除、入力転記ミスの抑制、労務コンプライアンスの可視化にもつながります。
2. 環境省の電動化補助金によるEVトラック・低炭素ディーゼル車への切り替え
CO₂排出削減と燃料費の安定化、グリーン物流要請への対応を目指す場合に活用できる補助制度です。主な選択肢は、BEV・PHEV・FCVといった電動商用車の導入を支援する「商用車等の電動化促進事業」と、燃費性能の高いディーゼルトラックへの切り替えを支援する「低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業」の2つです。運行コストの中長期的な低減だけでなく、環境対応への姿勢を荷主や取引先に示す材料としても活用できます。
※令和8年5月以降の公募情報については、環境省・一般財団法人環境優良車普及機構の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
3. トラック輸送省エネ化推進事業による荷待ち削減・空車率低減への対応
荷待ち削減、回送・空車率の低減、車両稼働の平準化といった輸送効率化を進めたい場合、トラック輸送省エネ化推進事業が活用できます。車両動態管理システムや配車計画システムの導入、ダブル連結トラック・スワップボディ車両の導入が補助対象となっており、消費エネルギーの削減、リードタイム短縮、ドライバー拘束時間の縮減などが図れます。
2026年4月からは改正物流効率化法の規制的措置が施行され、特定荷主への義務化が本格化するなど、サプライチェーン全体での効率化の重要性はさらに高まっています。
※令和8年5月以降の公募情報については、トラック輸送省エネ化推進事業事務局の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
まとめ
運送業は、安全・省力化・省エネ・脱炭素・人材確保・法令順守と、対応すべき課題が幅広く、いずれも相応のコストがかかります。国の大型制度(新事業進出補助金・ものづくり補助金・デジタル化AI導入補助金)に加え、電動化・低炭素ディーゼル・省エネといった環境系補助、高齢者安全対策や業界団体助成を組み合わせることで、短期の現場改善と中長期の競争力強化を両立できます。制度ごとに要件・スケジュール・証憑整備・実績報告の流れが異なるため、最新の公募要領を確認したうえで逆算して計画することが重要です。
9. 全日本トラック協会(全ト協)助成事業、11. 事故防止対策支援推進事業については、当社のクラウド型点呼システム「Cagou IT点呼」が補助対象機器となりますので、補助金申請のご支援が可能です。「Cagou IT点呼」は、運行管理者の点呼業務をクラウドで一元化し、記録の標準化・検索性向上・監査対応の迅速化に役立ちます。お気軽にお問い合わせください。
Q&A
Q. IT点呼システムは事故防止対策支援推進事業の対象になりますか?
IT点呼システムは補助対象となりますが、国土交通省が認定した機器に限られます。当社の「Cagou IT点呼」も補助対象機器となっています。例年、補助額は機器取得に要する経費の1/2(補助上限額は80万円)となっております。
※令和8年5月以降の公募情報については、国土交通省の公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
参照:国土交通省「令和7年度 過労運転防止選定機器一覧」
国土交通省「令和7年度 被害者保護増進等事業費補助金(事故防止対策支援推進事業)概要一覧」
Q. 運行管理のデジタル化に使える補助金はどれですか?
デジタル化・AI導入補助金2026の制度概要では、下記のとおり説明されています。
「デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です」
参照:中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金制度概要」
配車計画システム・点呼管理システム・勤怠管理システムなど、運行管理のデジタル化に直結するツールが対象となります。申請には事務局に登録されたIT導入支援事業者を通じた手続きが必要です。補助率は類型や事業者規模によって異なります。
参考文献
- 環境省「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金交付要綱及び同実施要領」
- 環境省「商用車等の電動化促進事業」
- 資源エネルギー庁「省エネ関連情報各種支援制度」
- 厚生労働省「エイジフレンドリー補助金」
- 厚生労働省「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 」
- 国土交通省「事故防止対策支援推進事業」
- 国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ(IT点呼・遠隔点呼関連)」
- 国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会」
- 中小企業庁「補助金の公募・採択」
- 中小企業庁「補助金公募情報」
- 事業承継・引継ぎ補助金事務局 「交付申請の手引き」
- 中小企業庁「令和6年度補正予算 ものづくり補助金概要」
- 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」
- 経済産業省・中小企業庁「中小企業向け補助金・総合支援サイト(ミラサポplus)」
- 渋谷区「人件費・物価高騰に伴う中小企業支援について」
- 神奈川県「原油・原材料高騰等対策特別融資」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金」
- 中小機構「「小規模事業者持続化補助金」一般型(第18回公募)及び創業型(第2回公募)の公募要領(暫定版)が公開されま
した」 - 全国中小企業団体中央会「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金総合サイト」
- 全日本トラック協会「助成制度」
- 環境優良車普及機構「低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業」
- 環境優良車普及機構「令和5年度補正予算 商用車の電動化促進事業」
- 一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会「令和8年度エイジフレンドリー補助金」
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026」
- 商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金」
- トラック輸送省エネ化推進事業事務局「トラック輸送省エネ化推進事業」
- 中小企業庁「事業再構築補助金 公式サイト」
- 国土交通省「令和7年度 過労運転防止選定機器一覧」
- 国土交通省「令和7年度 被害者保護増進等事業費補助金(事故防止対策支援推進事業)概要一覧」
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金制度概要」
関連リンク
※本記事の記載内容は2026年3月現在のものとなります。
※本事例で記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
