昨今、様々な業界でICTの活用が進んでいます。その中でも建設業界の中心に存在するのが「i-Construction(アイ・コンストラクション)」です。
i-Constructionは、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を活用した手法を建設現場に導入し全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組みを指しており、国土交通省が推進しています。
これまで建設業界では慢性的な労働力不足や、案件ごとに異なる規格・工法・納期の影響による生産性低下が課題でした。i-Constructionの推進により、ICTの導入や規格の標準化、施工時期の平準化など業界全体の生産性向上が可能となりました。
今回はi-Constructionの基本的な知識に加え、その活用領域について具体的に解説します。
目次
i-Constructionが建設業で必要になった背景
慢性的な労働力不足への対応
少子高齢化の影響で建設業界では労働者の高齢化が進行中です。特に団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」の影響もあり、次世代労働力である若者層の労働力確保が課題です。
(出典:令和4年 国土交通省「年齢階層別の建設技能者数」)
また、労働力不足に対処するために生産性を向上させることが必要です。建設業界を支える業者の約9割は中小企業です。加えて単品受注生産の特殊性、工事単価の低下、案件ごとに異なる工法や納期などが影響し、建設業界は低い生産性からの脱却が困難な状況にありました。
そこで、i-Constructionを推進することでICTの導入や規格の標準化、施工時期の平準化などを実施し、生産性を向上させることが期待されています。
i-Constructionの3つの柱
i-Constructionにはトップランナー施策として以下の3つの柱があります。
1. ICTの全面的な活用
「調査・測量」「設計」「施工」「検査」といった全ての建設プロセスでICT を活用していくことで、現場業務の効率化を目指します。
これにより、調査日数の削減や施工量の自動計算、重機オペレーターの熟練度向上等が期待できます。各業務にICTを取り込むことでさらなる安全性と生産性向上が可能となります。
2. 全体最適の導入
建設業界では現場ごとの「単品生産」や「部分別最適設計」が一般的で新技術の導入が困難です。i-Constructionでは「全体最適設計」の考えのもと、設計や発注、材料の調達といった一連のプロセスを最適化し、部材の規格標準化を進めるなどサプライチェーンの効率化を目指します。
3. 施工時期の平準化
建設業界では施工数が繁忙期と閑散期で大きく変動するため、労働者の収入が不安定になりやすく、繁忙期には休暇を取りにくいといった問題が発生しがちです。
こうした課題を解決するため、i-Constructionでは施工時期を平準化する発注計画の策定が進められています。業界全体の働きやすさが向上すれば、人材の流出を抑えることにもつながるでしょう。
i-Constructionの活用領域
i-Constructionは以下を例に様々な領域に導入され、それぞれにおける効率性と精度を向上させています。
- CIM
- XR
- ICT建機
- ドローン
- 3次元データの活用
以下に詳しく説明します。
CIM
CIMとは「Construction Information Modeling/Management」の略で、調査、設計、施工時の情報を3次元モデルに集約して管理する情報システムのことです。
建築分野では、デジタル上に現実と同じ建物の立体モデルを再現する「BIM(Building Information Modeling)」が先駆けて導入されています。土木分野では、これをCIMという形で取り入れ始めています。
CIMを導入すれば、設計段階から3Dモデルを用いて議論や検討が可能となります。その結果、工事開始前に発見できなかった課題や潜在的な問題を早期に把握でき、業務や工事の手戻りを防ぐことができます。
さらに、3Dモデルで基本的な属性情報を格納できるため「維持管理業務の簡易化」や「コストや工期の自動算出」といったメリットも期待できるでしょう。
XR
XR(クロスリアリティ)は、「AR(拡張現実)」「VR(仮想現実)」「MR(複合現実)」などの総称で、スマートグラスなどのデジタルデバイスを通じて、現実世界にデジタル情報を重ねたり、3Dモデルを活用したりする技術です。近年では、建設分野においても広く活用されています。
ARを用いて完成イメージを事前に体感できるため、施主からの「当初のイメージと違う」といったクレームを防ぐことができます。また、2Dの図面を表示した上で、躯体や設備の3Dデータを重ね合わせることで、作業員同士の認識のズレを防ぐことも可能です。
また、スマートグラスなどを通じて熟練技師の手元映像を共有し、現場作業における新人教育や技術継承にも活用が期待できます。
上記の通りXRを活用することで、作業の効率化や人手不足の解消、チーム内外での情報共有の徹底を実現できます。
当社では、建設業界向けにマーカー不要のXRサービス を提供しておりますので、是非ご検討ください。
ICT建機
ICT建機とは、情報通信技術を活用した建設機械のことで、「MC(Machine Control)」と「MG(Machine Guidance)」の2つのカテゴリーが存在します。
MCは自動追尾型の位置検測装置により、施工対象の設計データをリアルタイムで取得する機能を持っています。これにより、地盤データとの差分に基づき、重機を自動制御することが可能になりました。
MGも基本的な仕組みはMCと同様ですが、操作方法に違いがあります。MCが自動制御型の重機である一方で、MGは演算結果がモニターに表示され、オペレーターがそれに従いつつ重機を手動で操作する形式です。
ドローン
調査・測量におけるドローンの活用により、短時間で広範囲の測量が可能となるため、危険な作業でも安全かつ効率的に実施できることが期待されています。
ドローン測量は従来の航空測量に比べて低コストで実施でき、データの密度が高いという特徴があります。また、GNSS測位の高精度化が進んだことで、より精密な3次元データを作成できるという利点もあります。
これを活用することで、設計段階では「3次元モデルに基づくCIMの活用」、施工段階では「3次元データを制御するICT建機の利用」が可能となり、省人化と生産性の向上も期待できます。
3次元データの活用
i-Constructionでは、「3次元データの活用」も重視されます。
ICTを活用した施工では、建設業界に関わるあらゆる生産工程で3次元データを活かせます。
例えば、建築物の検査工程では3次元データとICT機器の組み合わせが可能です。これにより、検査日数の大幅な短縮と検査書類の大幅な削減が期待されます。
まとめ
これまで建設業界では、慢性的な労働力不足や案件ごとに異なる規格・工法・納期の影響による生産性低下が問題でした。
そこで、国土交通省がi-Constructionを推進することで、建設業におけるICTの導入や規格の標準化、施工時期の平準化などが実施され生産性の向上が見込めます。
また、CIMやXR、ICT建機、ドローン、3次元データ等の活用により、プロジェクト管理の効率化、作業の精度向上、時間とコストの削減などが期待できるでしょう。
当社では建設業界のお客様にご活用いただけるドローンや3次元データ利活用サービス、XR技術など様々な製品・サービスを提供しております。
ご気軽にお問い合わせください。
関連リンク
※本記事の記載内容は2025年3月現在のものとなります。
※本事例で記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。