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コアのとりくみ事例

CORE'S POWER

GNSS とりくみ事例 共同研究開発事例レポート

 

高精度時刻同期技術とAI単眼カメラを組み合わせた多点測位システムを国立研究開発法人情報通信研究機構と共同研究開発。
Beyond 5G(6G)の実現に貢献。

国立研究開発法人情報通信研究機構 

株式会社コア(以下、コア)は、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)ほか数社と2022年総務省の公募「電波資源拡大のための研究開発(周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発)」に採択され、共同研究開発に取り組んでいます。この取り組みを通じ、コアは高精度時刻同期技術とAI単眼カメラを組み合わせた開発を進めています。これによって、Beyond 5G(6G)の実現に必要な高速データ転送が可能となり、Society5.0が目指す超スマート社会の実現に貢献することができます。

 

 

次世代通信インフラを支える
周波数資源活用の課題

お話をお伺いしたお客様

国立研究開発法人情報通信研究機構
電磁波研究所 電磁波標準研究センター
時空標準研究室 主任研究員 博士(工学)
矢野 雄一郎

 

 


 

 次世代通信インフラであるBeyond 5G(6G)時代の到来を間近に控え、情報通信に関わる研究の重要性はますます高まっています。周波数資源は、現在の5Gネットワークに接続されるモビリティ機器やIoTデバイス 数の加速度的な増加によって逼迫され、通信品質や速度の低下といった障害発生の可能性が高まっています。総務省による周波数資源の有効活用に向けた研究開発の公募は、こうした課題が背景にあります。
 情報通信分野を専門とする国内で唯一の公的研究機関であるNICTとコアほか数社は、この公募に応募し採択されました。NICTの電磁波研究所 電磁波標準研究センター 時空標準研究室 主任研究員の矢野雄一郎氏は、次のように話します。
 「現在の5Gネットワークでは、産業用IoTのようなリアルタイムのレスポンスが要求される用途が増加しています。こうした中で限られた周波数資源を有効活用するためには、さまざまな端末の時刻情報を高精度に同期・管理することが重要となります。この精度が上がるほど、通信に使う同じ周波数帯の電波をより細かな時間単位に区切って複数の通信ユーザー間で効率的に利用できます。今回の取り組みでは、高精度な時刻同期基盤を確立するとともに、端末の位置情報を正確に把握する時空間座標情報基盤のための多点測位システムの開発を進めています」

 

 

GNSSの高度な技術を有する
コアとのパートナーシップ

 今回の共同研究開発でNICTがコアをパートナーに選定したのは、ある展示会がきっかけでした。大学院に在籍中から一貫してチップスケール原子時計(以下、CSAC)の研究に携わってきた矢野氏は、関連するさまざまな展示会に足を運んでいました。
 「CSACは小型の原子時計で、総務省からの委託研究における重要なファクターです。モビリティ機器やIoTデバイスには、スマートフォンのような通信機器から空撮用のドローンまでさまざまなものがあり、これらに搭載される原子時計には可能な限りの小型化や、振動、温度変化への耐久性が要求されます。展示会では、コアが開発したチップスケール原子時計を使用した高精度時刻同期モジュールが紹介されていました。こうした機器の扱いには独自のノウハウが必要ですがコアは十分な実績を備えていました」
 これに加えて、矢野氏はコアとのパートナーシップにあたり、民間企業ならではのスピード感も評価しました。
 「国の研究機関では、大まかな研究内容は中長期計画の中で方向性が定められ、研究計画を大きく方針転換することはできません。今回の共同研究において、コアはさまざまな課題に対して試行錯誤を繰り返しながら、新しい手法を提案するなど、民間企業ならではの機動力で貢献してくれています」

 

 

周波数安定度が飛躍的に向上
遠く離れた端末同士で高精度時刻同期が可能に

 共同研究開発から約1年半、NICTとコアはこれまでの成果に大きな手応えを得ています。その1つが、CSAC搭載のGNSSアンカーの試作機です。
 「コアが試作したGNSSアンカーは、長期の周波数安定度がこれまでのGNSS受信機に比べ約100倍向上する可能性があります。これが実現すれば、より安定性に優れた電波の時分割多重化※2が可能になります」この技術を応用することで、遠く離れた端末同士で高精度に時刻を同期することができ、さらには量子インターネットのような技術への応用も可能になると矢野氏は話します。
 もう1つが、AI単眼カメラを使ったコアの物体認識・測距技術をGNSS測位と組み合わせた「多点測位システム」です。多点測位システムは、さまざまな環境で高精度時刻同期を実現するための重要な技術であり、矢野氏は次のように話します。
 「カメラを用いた画像認識による測距アプローチは、NICTの研究対象外の領域なので、電波状況が悪いところでも画像認識で位置がわかることは、NICT独自の電波による測位技術との相補関係にあり、今後の社会実装においても、より広範囲な用途につながると感じています」

 

 

未来の社会課題解決も視野に
CSAC利用のさらなる研究を推進

 共同研究開発の2年目となる2023年度は、最重要テーマである時刻同期精度に注力し、現時点で当初の目標はほぼ達成できたと語る矢野氏。今後は、GNSSアンカーに搭載されるCSAC自体の性能向上にも取り組んでいきたい考えです。
 「その背景には、GNSS測位における電波妨害やスプーフィング(なりすまし)といった問題があります。より高精度のCSACがあれば、これらも検知して被害を未然に防ぎ、時刻同期基盤の安定性を向上できます」
 2025年頃にピークを迎えるとされる太陽フレア※3は、世界中の通信に大きな影響を与え、巨額の経済損失をもたらす可能性が指摘されています。高精度なCSACが搭載されたGNSSアンカーは、この影響を抑える上でも重要な役割を果たします。
 「私個人としても、量子力学を基礎に原子、分子、イオンなどの電磁波との相互作用を応用する量子エレクトロニクスは専門領域であり、高精度の周波数標準は非常に魅力的なテーマです。その意味でも、より小型で安定したCSACの研究開発はライフワークであり、これからも継続して取り組んでいきたいと考えています」と語る矢野氏。
 次世代通信Beyond 5G(6G)の実用化に向けた取り組みを強化し、より高速で安定した通信を実現することは、自動運転車、スマートシティ、遠隔医療などの新たなサービスや社会全体の利便性、生活の質を向上させることにつながります。NICTとの研究成果には、今後も大きな期待がかけられています。


※1 GNSSアンカー:センチメートル精度の測位方式MADOCA-PPPを応用し、周波数安定度、時刻同期精度を向上させ、時空間同期に必要な基準を供給する装置。
※2 時分割多重化:デジタル通信技術の一種で、時間を分割して複数の信号を同じ伝送路に送信する方法。コンピュータネットワークや電話回線などの通信システムで広く使われている。
※3 太陽フレア:太陽の表面で発生する爆発現象で、X線などの電磁波や電気を帯びた高エネルギー粒子が放たれ、GPSや通信などに障害を与える。

コアが試作したGNSSアンカーは、 長期の周波数安定度がこれまでのGNSS受信機に比べ、約100倍向上する可能性があります。これが実現すれば、より安定性に優れた電波の 時分割多重化が可能になります。

お客様プロフィール


お客様名 国立研究開発法人情報通信研究機構 様
本部 東京都小金井市貫井北町4-2-1
事業内容 情報通信分野を専門とする国内で唯一の公的研究機関。情報通信技術の研究開発を基礎から応用まで統合的な視点で推進し、同時に大学や産業界、自治体、および国内外の研究機関などと連携して、研究開発成果を広く社会に還元し、イノベーションを創出することを目指している。
URL https://www.nict.go.jp/

 

関連リンク


 

貢献するSDGsゴール目標


 

※本事例の記載内容は2023年12月現在のものとなります。
※本事例で記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。

 

 

 

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